テクノ城塞都市・デトロイトの現在は
●デトロイトへの還り道 ホワン・アトキンスやデリック・メイ との遭遇に始まって、決定的なURの追 い打ち。それから数年・彼らの「テクノ」 を追い続けた結果、ちょと意外な地点に 到達しちゃった私たち。シカゴアシッド の復興・再発見という大事件の後、新し い耳でデトロイトテクノと向きあってみ れば…。 ●「デトロイト」って? その特徴はヘンでマイナーで速過ぎで 踊れない(主流的ハウスに比べて)、とゆー こと。冗談でなく、これはホンの数年前 までダンス界のジョーシキだった。今、 デトロイト(以下・デ市)テクノを速過ぎる、 と思っている人はいないハズだが、聞か れているわりにクラブでかからないのも (何しろ、フロアではシカゴが強過ぎる) 事実では? と言うと「URやミルズは どーなのよ」と反論されそうだが、彼ら 「'90年代派」の作風は大きくシカゴに影 響されたものだ。 '80年代に確立されたデ市モノの特徴は、 ロディアスに展開してクリシェ(お決まり のフレーズ)を使わないこと。リズムの組 み方が繊細で、303を使っても「フィルター ぐりぐり」はやらず。音色とリズムだけ で展開し、クリシェの多いシカゴとはま ったく対照的。形式にとらわれず深さを 求めるデ市と、形式だけをシツコく追求 のシカゴ。が、デ市の新世代は深〜くシ カゴに影響されており、しかも有名(?) アーティストは市外や欧州に移住しがち。 そのため、今やデ市の独自性はやや薄れ ているかも。デ市の強豪連でも、「シカ ゴにゃ〜負けねェ!」と顔に書いてある のはホワンだけ、って感じ。 ●勇者はどこに (13k, jpg) V.A.「DIGITAL SECTS 2」MATRIX/MR1009 謎の日本人(?)モチヅキ氏も参加、なぜ か全体に日本的 Kハンド姉キ(近作はちょっと…)以 降、新スター不在のデ市。そこで金の卵 を発掘!とばかり、デ市のマイナ〜関係 を物色。まず姉キのレーベルのクロード・ ヤング『シリアル・イメージ』(Acacia/ AR002)は…むぅ〜B面はまーまーだが、 コレならR・フッドの旧盤でも買った方が。 お次はS・ディースン率いるマトリクス 軍団、オムニバスCD第2弾(上図)。 スリーブに「知性派大会」とかウタって るし地味だけど、音楽的内容は非常に濃い。 ふだんシカゴっぽいダン・ベル様やX31 3(正体はT千?「マンガおぢさん」の近 作にも注目)も、ここでは神妙にデ市式 で勝負。全体の統一感も見事、こーこな くっちゃ。そしてAUX88(Direct Beat/ DB4W-009)は初期M五百(ホワン)直系の電 子ポップ隊。あの異才ドレキシャをもっ とB級にして(ひィっ)、語りに近い唄を 挿入。エイリアンFMはAUX88の別ユ ニットで作風も酷似(下図)、リズムはク ラフトワーク+Pファンク。 (11k, jpg) 「ALIEN FM」 430 WEST/4W-230 異星人が発信(?)のヘンな 電波は哀愁の旋律。M500 やドレキシャ好き者に推薦 ●そして最優秀盤は… 某レコ店で「アングラの極みっ」とゆー レッテルを貼られたオクターブ・ワン 『征服された国』(430 WEST・4W-245)。形 式は独特のハウス風だが、何もなさそ〜 な音響に込められた深い感情。「言いた いコトあるけど言わない!」という内面 の強さ(題名も意味深)が心にガツッ。彼、 サブマージのCD3番ではそこそこだっ たので近日大成長?(本名がバーデン・ バーデン・バーデン、とは超ヘン)。彼や エイリアンFMを収録のオムニバス盤 (430 WEST/4Wー235)もニャイス。C・クレ イグのアルバムやミルズの新作(AXIS/ AX12)には空虚っぽさを感じてしまったが、 コイツら不退転・地下技術鬼どもはだいじ ょーぶ。
Nogucci Harumi < MGH03372@niftyserve.or.jp >