ウィ〜ンの森の物語(技術編)


 マリ〜アントワネットの故郷から押
し寄せる、世紀末テクノの波とは?
        
 「優雅」という印象のある、ウインナワ
ルツ。でもこの踊り、「イヤらし過ぎる
〜」という理由で、一時は禁止されてい
たコトをご存知だろうか? 3拍子じゃ
ないけどウィーンテクノもまた同じ、ど
こか不健康。ゴハンの代わりに食べるお
菓子のような味がする。これまでこのシー
ンが注目されなかったのも当然、ウィー
ンは極めてアブナいのだ。

 このシーンで最も優れたアーティスト
は、もちろんパルジンガー。彼の作品は
そのつど紹介しているが、その意味が見
えてきたのはつい最近。EXでのハード
酸に始まって「10」やスラッツでのレア
グルーブ・テクノ、『独断的反復』シリー
ズの地味変アシッド、それらは「表現を回
避する表現」の煮え切らなさから剰余の
感情と知性が溢れ出すような、おっかし
い作品群。それらに比べ最新作『ポルノ』
は、ついにケツをまくっての健康な作品
(?)で素晴らしい…でもポルノだから
「不健全」なワケで、ど〜にもパルさん
ってば感覚が曲がってる(そこがイイん
だけど)。

 さてウィーンのレーベルでは'93年設立
のメインフレーム(MF)が老舗だが、最近
は新作発表ナシ(寂しい…)。やっと見つ
けた旧盤は、1番『メインフレーム/mf1』
と8番『u-cons-e/センサーEP』。正
体不明の前者は、独逸Hからカラ元気を
取り除いてアシッド入れたよーな音。後
者はエリン(ウィーン在住らしい)の変
名作で、ブチブチの低音反復に乗っかる
とりとめのない上モノ、と少し変わって
る。ともに作りはダサくないのだが、何
とも元気が出てこない。このウィーン的
脱力感にトドメを刺してくれるのが、イ
ルザ・ゴールドという超バケモノだ。

 (32k, jpg)

 ILSA GOLD「GASOMTERTRAX」
 DIGITAL MEMORY/XXX-003 dig mem
 テクノの黄昏を示唆する、昨年の奇盤

 この正体不明の奇人(別に女性ではな
いらしい)は、MFやテンションからア
ホくさいブレイクビーツHを出している
ウィーンのバカとして知られるが、その
実体は借り物の方法論でヘンな音をタレ
流すポストモダ〜ン・スキゾテクノ者。
でもひょっとしたらイルザは、自分の血
を流しながらフザケているのかも。そう
思わせた左図作品は「ウルサくも哀切な
ミニマルH+ワザとらしい歓声」で、ま
さしくレイブ時代への鎮魂歌。イヤなの
に、耳について離れない。退廃を極めて、
根源的哀しみに到達か? 恐るべし、ウ
ィーンテクノ。

 (14k, jpg)

 ILSA GOLD「UPSOLUTE EP」TENSION/TEN 3000
 '93年、イルザの幼児性欲的ブレイクビーツH集

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