「ハイパーリッチ・パルス6」12月17日/下北沢・屋根裏

愛は羞恥を超えて


 テクノって楽しい。だから、その勢いでテクノ活動開始するのはカンタン。でも、その楽しさを持続するのは意外とムズカしい。いつの間にか、楽しさを期待されるのが重荷になってくる。

 彼ら自身のレーベルからリリースされた、B2デプトのアルバム。この旧作まとめて再録音の新譜を聞いてわかったが、本来なら一生に一度の混じりっ気なしの楽しさを、彼らはず〜っと供給してきたのだ。プラスチックス以来の日本テクノ、その美味しい部分をギッシリと集大成。しかも唄なしなのでカラオケとして使用可、コレさえあればボーカルの中村はどこでも営業ができる(どこで?)。こりゃも〜一家に一枚だな。

(14k, gif)

B-2 DEP'T「LOOK BACK 1990
-1993」OMNI DATA/OMNICD01
次回リリースは加藤ソロ「合気道」

 そして、デプトはすでにその場所にはいない。12月17日、下北沢・屋根裏に出演の彼ら。得意のお花調を交えながら、ゆるやかに織りあげた音空間。そこにひたりながら「そうだ、もっともっとエゴイストになれっ!」と心で叫んでいたデジビ。

(14k, gif)

環境+アシッドの新境地へ進むデプト

 さてこの夜の他の出演者、まずは平川毅16歳のキュープラス。ローランドLA音源の矩形波を、彼ほど美しく鳴らしたテクノ者はいない。努力してる様子はないのに、ナゼ? ますます冴えるDJ成田のサポート、桑島武を迎えてキューベースの名曲「×室ハンター」も。1月10日、新宿ヘッドパワーでのDATゾイドとの合体ライブにも期待が高まる。

 DATゾイドと千葉レーダのパフォーマンスは、ある意味で対照的。彼らはテクノに羞恥と罪の意識を感じている。それは演者の肉体への抵抗のなさと、いつも同じ演奏、という条件によるものらしい。千葉レイはその意識を様式の確立によって克服し、ほとんど変わらないショーを「15回目です」「16回目です」と繰り返す。一方DATゾイドの面白さは、せっかく築いたスタイルが善意の過剰によって崩壊してしまうこと。テクノ者は反復を恐れてはいけない、とすれば千葉レイが優れているが、真に羞恥を突き抜けるのは「愛」だけだ。最後、ナツコアッパークラストの堂々たる演奏がそれを教えていた。

(15k, gif)

茂原市のカラオケ
スナックで唄い狂う
地元の成金オヤジ
(別名千葉レーダ)。
これってテクノか?


Back to vol.10 Contents Next Page 「聞こえているのはどんな音?」

Nogucci Harumi < MGH03372@niftyserve.or.jp >