〜荒野の風がテクノを変える〜

紐育から中西部へ


 NYから5大湖地方を経てミネソタ州ミネアポリスまで、二千劼離謄ノ巡礼。その途上で(行ってないけど)デジビが発見したナゾの地下水路とは? ますます興味津々の一大アシッドロマン、いかがでしょ〜?

●紐育・暗黒街の顔役
 一時はNYの顔役として、ベルトラムと並び称されたレニー・ディー。現在彼は地下テクノ界のドンとして、人知れず万国変態運動家たちの尊敬を集めている。図のCDは、彼を慕う米・独・蘭のハードコア軍団昨年のコンピ。内容的にはプロディジーを69倍バカっぽくしたようなレイブもの、ガバ、そしてハードアシッドで、まーとにかくうるせ〜、でもそんなにイヤじゃない。レニーの選曲の良さもあるが、アルマーニのハードな部分(タテのりと歪み)を曲解し、スラッシュやパンクと勝手に合体させている彼らだって、あの'88年(ロックの滅亡と、シカゴ&デトロイトからの福音)の落し子なのだ。パンク根性抜けないデジビは、つい共感。非常にドライなNY勢&全ガバ連よりも、ZEKT、オンガク、3XXXら独逸勢の愁いある(…?)激辛アシッドがイイが、ここで突然ソラ耳コーナー。「坊さん坊さん坊さんの履いた網タイツ!」と連呼するM6。

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「LENNY DEE presents TRAX FROM 
THE DARKSIDE」INDUSTRIAL STRENGTH/ISCD2
怖ーい悪魔のDJ。でも右手だけヘンに色っぽい(?)

●電波は走る、紐育から中西部へ
 そのレニーも参加のオムニバスEPが『NYから中西部へ』。A面はおなじみデーモン・ワイルド様(年末に来日、次号で詳報)とスティーブ・ストールの合作、B面はアダムX(NYのダイレクトドライブで活躍)とレニーの奇妙作。NYのボス連が大集合はわかったが、どこが中西部かというと、出しているレーベルがミネソタ州 St.ポールのアナログ。そして、ここんちの社長サマこそあの問題児フレディ・フレッシュであり、この音盤はNYと中西部を結ぶ異常者連帯のシンボルなのだっ。

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「NEWYORK TO MIDWEST」
ANALOG 7 A面はキュートな
ミニマル、B面は感覚がヘン。
なお本記事関連、情報を提供
して下さった皆さまに深謝

●中西部・サバービアの欲望
 ワイルド+その周辺と交流深いフレディを、前号ではNY人とお伝えしたが、これはカン違いでゴメンちゃ。その後わかった話を総合すると、彼はSt.ポール在住のオッサンで2人の子持ち、昼は工場・夜はピザ屋で働きながらテクノを作り、レーベルを運営。『WAX』(本誌【p.7】参照)第2号に掲載の写真を見ると、ベッドの真横にモーグやアープの銘機&ビニ盤がゴチャ〜、フレディ自身は「普段は大人しいのに、ある日突然ピストル乱射」みたいな感じのアブナそーな大男。だが意外にも人格者として有名で、シーンで彼を悪く言う者は皆無とか。お見それしました…。彼の良さについては前号でも触れたが、英国レイブワークスからの最新『ラボトマイズEP』(UNDRAB009)もスゲ〜力作。明けない夜明けを待ちながら踊り狂う気持ちみたい、イイぞ!

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「オレたちゃ中西部のハード
軍団。アンダーグラウンド
だけがリアルだぁいっ!」
と宣言する信念の集団
ドロップベース(のロゴ)。
みんなで応援しようねっ

 ところでフレディの住むSt.ポールと、まもなく登場ウッディの住むミネアポリスは、ミシシッピ河をはさんで農畜産物の集散加工地として栄える双子都市、恐らくテクノ度ゼロ。そんな街で、ひとりテクノに目覚めてしまったらどんな気持ち? レコードを取り寄せるたびにドキムネ、ましてシンセなんか買ったりしたら「どうしよう、オレはみんなと違う!」という恍惚と不安。大げさかなー。しかし、少なくともフレディの曲にはそんなせっぱ詰まった気持ちを感じる。真剣さ。いたずらに歪みをもて遊んでいるのではなく、心の動きの裏付けがある。そして初期には分裂していた激しさと静寂の祈り、今や彼はそれらを1曲の中で同時に表現できるまでに成長を遂げたのだ。

 さて、そのフレディも出しているレーベル「ドロップベース」は本拠地ミルウォーキー、中西部3州をネットするアングラ組織。ここでダントツのアーティストが、デジビ激愛のウッディ・マクブライドなの!

●ウッディ大好きコォ〜ナ〜!
 彗星のように登場、そして瞬時に世界のアシッド狂(ハードフロア、ワイルド様、サスキア嬢、そしてデジビ。あれ?)をトリコにしたミネアポリスのニクいヤツ、それがウッディ、またの名をDJ・ESP。彼の魅力は、大平原の風の香りと地下室のカビ臭さのブレンド、つまり爽やかさと密室性の混在(ブラッドベリのキノコ少年!)。特に近作は1曲でひとつの雰囲気を作るというよりも、あからさまに数台の 303 と 808・909 だけで作っていそうな単純さ+持続音の少ない点描的空間工作の反復の中に、切れぎれの感情の断片が浮かんでは消えるようなまったく独自の作風に到達している。そして'94年のリリース量はすさまじく(出し過ぎはカラダに悪いぞっ!)、ドロップベースから3枚(最初の2枚は未確認)、アナログの6番に1曲、レイブワークスから芸名4DでCD(前号でチラっと紹介、よく聞いたらイイ!)とEP、デトロイト落書きオジさんのゼネレータ9番(ちょっとよそ行きの曲調、どうしたの?)、自分のレーベル・コミュニケから2枚(超コア!)、そして最新作はSW9番…と、数え上げるだけでタイヘン。「あんた、5分の曲は30分で作ってない?」とも言いたくなるが、そうだったとしても許せる、だってみんなイイんだもん。全作品解説したいがそれは別の機会に、とり急ぎオススメは、バラエティで前号紹介「バッドアシッド」、まったく独自な彼の世界はコミュニケ2番、以上2枚組なので1枚物ではSW9番。さあ、アナタもウッディの地下室へご案内〜!

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ESP「LOW」
SYNEWAVE NEWYORK/SW09
本当は誰にも教えたくない
ウッディの魅惑。「エース・フ
レーリー」なる曲もある彼が
本作ではD.ボウイに挑戦!?


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